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コラム

【コラム】よくある労働相談①『従業員からの突然の退職の希望』

よくある労働相談①『従業員からの突然の退職の希望』

1 はじめに

普段から経営者の皆様から労働関係のご相談をお受けしておりますが、相談内容としては、退職に関するご相談が多いです。

具体的には、「従業員から突然辞めたいと言われて困っている。」、「勤務態度が悪い従業員について、改善が見込めないため、退職してもらいたい。」、「能力不足の従業員を解雇したら、その従業員が弁護士に依頼をして、解雇無効を主張する内容証明郵便を送ってきた。」という内容が多い印象です。

今日は、「従業員から突然辞めたいと言われて困っている。」というご相談について、少しお話ししてみたいと思います。

2 検討

多くの場合、会社(個人事業主も含む。)と従業員の間には、雇用契約が締結されています(「多くの場合」と留保したことについては理由があるのですが、その点についてはまた時期をみて記事を書きたいと思っています。)。

そして、雇用契約は、期間の定めのある雇用契約②期間の定めのない雇用契約に分けることができます。従業員からの退職の希望について考える際には、この2つの場合に分けて検討する必要があります。

※正確には会社から労働者に対する解除・解約の問題もありますが、今回は労働者からの退職希望の場合に限定してお話しします。

①期間の定めのある雇用契約

①期間の定めのある雇用契約については、期間中の労働者からの雇用契約の解除はやむを得ない事由がない限り認められません(民法628条)。会社も労働者も、雇用契約の期間を決めた以上は、その期間については、原則として契約関係を維持し、互いに義務を果たしましょうということです。

よって、原則としては、(あくまで一例ですが)疾病などによって労務に従事することができないなどの事情がない状況での、期間中の解除は認められない可能性が高いといえます。

ただし、就業規則で、民法628条よりも労働者に有利な内容の規定(例えば、やむを得ない事由がなくとも、一定期間前に会社に申し出ることで期間中の解除・解約を認める内容の規定)がある場合には、就業規則の規定に基づき期間中の解除・解約が認められるケースはあり得ると考えます。

ただし、やむを得ない事由があり、解除が認められたとしても、その事由が当事者の一方(今回のケースであれば労働者)の過失に基づく場合は、労働者は会社に対して損害賠償責任を負うことになります(民法628条)。

②期間の定めのない雇用契約

②期間の定めのない雇用契約については、労働者からいつでも解約の申出をすることができ、原則として、解約申出から2週間が経過すると、退職(雇用契約の解約)の効果が生じます(民法627条1項)。

よって、労働者から解約の申出がなされた場合は、会社は退職の効力を否定することは極めて困難です。

この点につき、ご相談時には、「就業規則で『退職する場合は1か月以上前に会社に申し出なければならない』といった規定があるから、その規定を守らない退職申出には問題があるのではないか?」といった声をお聴きします。

しかし、この場合、裁判所では、就業規則の規定ではなく、民法の規定(627条1項)に基づいて判断されることになると考えられるため、やはり、原則として解約申出後2週間の経過をもって退職の効果は生じると考えるべきです。

ただし、例えば、繁忙期を前に十分な引き継ぎもせずに労働者が突然退職し、会社に具体的な損害が生じた等の場合には、労働者が会社に対して損害賠償責任を負うこともあり得ます。損害賠償責任の検討の際に、就業規則に『退職する場合は1か月以上前に会社に申し出なければならない』といった規定があることは、一つの事情として考慮されることはあり得ると考えます。

3 労務管理についての考え方

【法的な視点】

以上のように、一言で「退職」といっても、雇用契約の期間の定めの有無、退職に関する経緯、就業規則の規定内容等によって、対応は大きく変わってきます。

退職に関しては、その他にも、競業避止義務(退職者が競業他社に就職することを一定の範囲で制限する義務)や機密保持義務に関する対応など、今後の会社経営に影響する法律上のリスクの管理も重要になってきます。

また、労働者からは残っている年次有給休暇をまとめて消化したいとの希望がなされることも多く、この点も問題になるケースがあります。

【実際の労務対応の視点】

以上の法的状況を踏まえつつ、経営者としては、まずは、なぜその従業員が突然の退職を希望したのかを考え、慰留の可能性を含め、その従業員を話をする機会を設けてみるのも一つの方法だと思います。会社としては、従業員からそのような突然の退職希望がなされた場合、それが単に従業員の都合によるものなのか、会社側に何らかの問題があることによるものなのかを確認する必要もあります。会社に非がある可能性がある場合は、当然、その改善に取り組み、労務環境を整えることを考えるべきです。

仮に、従業員が退職することになったとしても、従業員との協議の上で、退職日時点で未消化となり消滅してしまう有給の買い取りも視野に入れて、退職日の調整を行い、できるだけ引き継ぎ業務を行ってもらえるように協議することが考えられます。

労働者の視点からしても、有給を会社が買い取った結果、結果的に支給される賃金の金額は高くなることもありまず。また、引き継ぎ業務を行うことで、退職後に会社から損害賠償請求を受けるリスクも減り、互いに法的な問題を抱えにくい形で対応を終えることができます。

労働事件を抱えてしまう前に、普段から就業規則の作成・整備を行い、労務管理の体制を整えておくと安心だと思います。

※本コラムは、法律に関する一般的な内容及び弁護士としての経験に基づく一意見をお伝えするものであり、個々の案件に対するアドバイスを行うものではありません。実際のご相談・事件対応においては、具体的な事情によって対応方針が大きく変わります。実際にお困りごとがある場合には、弁護士に具体的な事情をお話しいただいた上で、事案に合ったアドバイスを受けるようにしていただければと思います。

 

 

 

 

 

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